現在個人の口腔環境の診断は、口腔疾患の経験値から、つまり「むし歯や歯周病の多い人は口腔環境が悪い」といった評価がなされているのではないでしょうか。そうだとするとこれは疾病予防学の観点から言えば、はなはだ本末転倒と言わざるを得ない状況と思われます。
唾液は口腔内環境の構築、維持という重要な働きをしており、1日のうちで口腔内が安静時に置かれる時間は、約16時間と最も長いことから、安静時唾液の口腔内環境に及ぼす影響は非常に大きいと考えられています。しかし、個人の安静時唾液量の代表値を決定するためには、唾液分泌速度のサーカディアンリズム、個人内変動、測定方法の誤差、などにより頻回の測定が必要となり、歯科臨床ではほとんど診断に供されていません。概念は理解されているのにそれを実際に応用できないというのは残念なことです。何とかして、口腔環境の診断につなげていけないものでしょうか?
細菌さんの住む口腔村に湧き出てきた唾液は、唾液川となって上顎山、下顎山の麓を巡り、やがて嚥下ダムから村外に流れ去っていきます。そしてこの川の流れる速さ、水量がこの村の環境を左右していて、場所によっては環境差という問題も生じていると考えます。川の水量(分泌速度)と水質(pH)、嚥下ダムからの排水量(嚥下回数)はともに関係しているに違いありません。
本講演では、口腔に分泌された唾液がやがて嚥下されていくまでの過程を、フェルミ研究の手法を使って分析し、簡便で確実な口腔環境診断法の確立にアプローチしたいと思います。
日時 | 2024年6月16日(日曜日) 14:30~15:30 14時より受付 |
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講演時間 |
約60分 |
参加資格 | 唾液に関心のある方 |
定員 | 現地50名 WEB定員なし |
料金 | 無料 |
場所 | 神奈川歯科大学横浜クリニック講堂7F 〒221-0835 神奈川県横浜市神奈川区鶴屋町3-31-6 |
お申し込み方法・問い合わせ |
「申し込み」ボタンよりご希望日時をご予約ください。開催URLはお申し込み後、全員にご案内いたします。 問い合わせはjsca@kdu.ac.jpにお願いいたします。 |
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1977年岐阜歯科大学(現朝日大学歯学部)卒業.1985年北海道医療大学准教授。1985~87年マニトバ大学客員教授、Colin Dawes 教授研究室で唾液の研究を行う.1995年明海大学歯学部大学院教授. 定年退職後同大学名誉教授。
現在は同大学保健医療学部教授として歯科衛生士の教育を中心に研究、臨床に携わる.
専門は小児歯科学で、日本小児歯科学会副理事長.日本障害者歯科学会理事. 日本子ども学会理事.日本小児保健協会監事.埼玉県小児保健協会会長.日本小児口腔外科学会理事.日本歯科薬物療法学会理事.千葉県学校保健学会理事等を歴任する。2015年には日本子ども虐待防止歯科研究会を設立。会長に就任し、歯科領域から子ども虐待防止に取り組む。
2017年日本小児歯科学会賞.2019年「5歳児の1日の唾液分泌量」でイグ・ノーベル賞化学賞を受賞する.